[優秀賞] 被災を乗り越えて見えた和紙の未来 文化複合施設「KAGOYA」
受賞プロジェクト
被災を乗り越えて見えた和紙の未来 文化複合施設「KAGOYA」
受賞団体
名尾⼿すき和紙 株式会社
受賞代表者
⾕⼝ 弦
デザイナー
Studio Hashimura 橋村 雄一
プロジェクト概要
名尾手すき和紙
1690年(元禄3年)、佐賀県名尾地区にて100軒以上の和紙工房が軒を重ねるまでに広まった「名尾和紙」を現在も漉き続けている名尾最後の手すき和紙工房です。原料である梶の木の栽培から手すきで紙にするまでを名尾の工房で行っており、日本各地の伝統工芸や伝統芸能に深く結びついています。2021年の豪雨災害で発生した土石流と土砂崩れにより工房と店舗が被災し、同名尾地区内に工房と店舗を移転。300年同じ場所で和紙を漉き続けてきた、先代人も含めた私たちにとって移転は苦渋の決断でしたが、「和紙」とは何かを問い直す貴重な機会となりました。
和紙を「もの」ではなく「概念」としてもとらえる空間づくり
和紙を紙としてだけでなく五感で捉えることをテーマに、これまで和紙が関わることのなかった人の営みや産業とを結びつけました。名尾手すき和紙新店舗「KAGOYA」では、関係性を拡大することで生まれた新たな視点をもった和紙と出会うことができます。
特徴
- 和紙とは何か?を問い直す
- 語感で捉えることで見える和紙の価値。関係性をデザインし拡大する
- 和紙を「もの」から「概念」へ
パネルデザイン

スライド
ホームページ
審査委員講評(内田 友紀)
300年続く名尾和紙にとって、未曾有の災害による衝撃は計り知れない。しかしその契機に生業から一時離れたことを経て、和紙の存在を問い直し、その有り様を再解釈・再構築することで新たな表現へと見事に昇華されたことに、心から敬意を表する。継承するだけでなく変容させることに挑む姿勢、和紙の再解釈を通じて社会との新たな関係を築こうとする試みは、各地の工芸に携わる人々に大きな勇気と示唆を与えるだろう。